「ドン・キホ-テ」の村、ビジャヌエバ・デ・ロス・インファンテス

ビジャヌエバ・デ・ロス・インファンテスは、カスティーリャ・ラ・マンチャ州、シウダー・レアル県の、人口6千人弱の小さな村である。
「ドン・キホ-テ」の作者ミゲル・デ・セルバンテスはドン・キホ-テの故郷のモデルとなった村を明確にしていなかった為、シウダー・レアル県の他の村が長年有力視されていたが、2004年にマドリードのコンプルテンセ大学を中心とする研究グループは、詳細に分析した後に、ビジャヌエバ・デ・ロス・インファンテスがモデルになった村であると新説を発表した。その為ビジャヌエバ・デ・ロス・インファンテスが急に脚光を浴び、観光客は急増した。

小さいながらもこの村の見どころは多く、特に中庭のある集合住宅の建築様式は素晴らしく合計300以上もある。現在住人が居る建物の中も、迷惑がかからない範囲で中庭等の見学が許可されている所も多い。古いもので16世紀の建物からあり、法律によって保存が義務付けられているので、重厚な扉を開け中に入ると、エントランスにはその当時の馬に乗る為の石の台や装飾品がそのまま残され、タイムスリップしたかのようだ。それぞれの建物には個性があり、どれ一つと同じものはない。梁の部分が直線なのかア-チ型なのかによって、個人宅だったのか公の施設であったのかも分るそうだ。また、現在では珍しい木製のバルコニーも数多く残っている。

また特筆すべきは、小さいながらも当時の権力者や作家をはじめとする芸術家がこの地に邸宅を持っていた為、外部に紋章が付いている建物が多い。その数約250で、スペイン国内ではトレドに次いで多い。それは村の名前の由来である「王子の新しい村」、サンティアゴ騎士団長でアラゴン王国の王子(インファンテ)のドン・エンリ-ケ・デ・トラスタマラに特権が与えられ、独立し村となった為であろう。
当時の繁栄の余韻を味わい、ドン・キホーテの世界に浸るのも、他の地にはない感慨深さがあるのではないだろうか。